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ムジーク王国散策記(公式アンソロジー)

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A5二段組★カバーホログラムPP加工 / 162P / 1000円 拙著『国王と七音の旋律 ~ムジーク王国記~』シリーズの、公式アンソロジーができました! 総勢10名の参加者と、表紙イラストに風街いと様をお迎えしての、小説ありイラストあり漫画ありの豪華162ページ! 原作者も、各作品への謝礼として挿絵とSSにて参加しております! ※原作の1巻、2巻まで収録の情報と時系列で執筆をお願いしております。 未読の方でもお楽しみいただけますが、一部の設定が分かりづらい可能性がありますので、1~2巻も併せてお読みになることをオススメいたします。 執筆者一覧(敬称略・掲載順) ・〇まる(キノコ本舗。)-----イラスト、小説2本 ・柏木むし子(むしむしプラネット)-----イラスト ・宗谷圭(若竹庵)-----小説2本 ・桐谷瑞香(桐瑞の本棚)-----小説 ・たつみ暁(七月の樹懶)-----小説 ・ソウ(いとこん。)-----小説 ・きよにゃ(招福来猫)-----漫画 ・灰青ザクラ-----小説 ・ほた(夢花探)-----小説 ・服部匠(またまたご冗談を!)-----小説 原作・監修・主催-----卯月慧(勇者斡旋所) ★試し読み ムジーク王立修道院広報(卯月慧) -------------------------------------  私がその紙を手にしたのは、ムジーク王国に入って最初の関を抜けた時だった。  パリッとした修道服に身を包んだ若い男女が、隣国リタルダンドから入ってきた人たちに向けて無作為に配布している。中には「知ってるし」と呟きながら小さく丸めて通りの屑籠に投げ捨てた人もいたが、私は興味を持って手元の紙に視線を落とした。 『ご存知ですか? 精霊相性』  上部に大きくそう書いてある。――精霊相性?  ムジーク王国が精霊の国と懇意であることは噂に聞く。そもそも精霊の国とやらが本当に存在するのかどうか、その辺りから眉唾物なので、不確かな上に不確かを乗せたあやふやなものなのだが。  その下の詳細を黙読。私たちの身の回りには万物を司る精霊が存在し、契約を結ぶことで大いなる力を借りることができる。精霊は現在十種が確認されており、人との間には『相性』が存在する。ムジーク王国では洗礼を通じて、精霊相性を髪色にあらわす文化がある。国外の方々に、三日間の期間限定でこれを体感してもらいたい――  周囲を見回す。私と共に他国から来た人々は、濃淡の差はあれど皆似たような色味の髪をしていた。個人ではなく、ある程度大まかな種族によって色が決まっているからだ。  それが、ムジーク王国の人々はどうだろう。目の覚めるような赤、深い海の青、若葉を思わせる緑、透き通る金――その様々な髪色は、まるで極彩色の花畑にいるようだと錯覚させた。親子とおぼしき三人組ですら、父が濃紺、母が桃、子が黄緑とばらばらだ。髪色が遺伝によるものではないのだと容易にわかる。  紙にはさらに、精霊との相性を知れば力を借りやすくなる、とある。各精霊の種類と共に、司る色が添えられていた。  私はどの精霊と相性が良いのだろう、そういえば考えたこともなかった。祖国では、呪文を唱えてみたらば発動した、という理由で風の魔法を活用していたが、そうすると私の髪は緑系統となるのだろうか。三日間だけなら、ちょっとしたお洒落感覚で洗礼を受けてみるのもいいかもしれない。  ムジーク王国での旅路が、素晴らしいものになりますように――祈りながら紙を懐にしまうと、私は誘われるように石畳を踏みしめた。 -------------------------------------

A5二段組★カバーホログラムPP加工 / 162P / 1000円 拙著『国王と七音の旋律 ~ムジーク王国記~』シリーズの、公式アンソロジーができました! 総勢10名の参加者と、表紙イラストに風街いと様をお迎えしての、小説ありイラストあり漫画ありの豪華162ページ! 原作者も、各作品への謝礼として挿絵とSSにて参加しております! ※原作の1巻、2巻まで収録の情報と時系列で執筆をお願いしております。 未読の方でもお楽しみいただけますが、一部の設定が分かりづらい可能性がありますので、1~2巻も併せてお読みになることをオススメいたします。 執筆者一覧(敬称略・掲載順) ・〇まる(キノコ本舗。)-----イラスト、小説2本 ・柏木むし子(むしむしプラネット)-----イラスト ・宗谷圭(若竹庵)-----小説2本 ・桐谷瑞香(桐瑞の本棚)-----小説 ・たつみ暁(七月の樹懶)-----小説 ・ソウ(いとこん。)-----小説 ・きよにゃ(招福来猫)-----漫画 ・灰青ザクラ-----小説 ・ほた(夢花探)-----小説 ・服部匠(またまたご冗談を!)-----小説 原作・監修・主催-----卯月慧(勇者斡旋所) ★試し読み ムジーク王立修道院広報(卯月慧) -------------------------------------  私がその紙を手にしたのは、ムジーク王国に入って最初の関を抜けた時だった。  パリッとした修道服に身を包んだ若い男女が、隣国リタルダンドから入ってきた人たちに向けて無作為に配布している。中には「知ってるし」と呟きながら小さく丸めて通りの屑籠に投げ捨てた人もいたが、私は興味を持って手元の紙に視線を落とした。 『ご存知ですか? 精霊相性』  上部に大きくそう書いてある。――精霊相性?  ムジーク王国が精霊の国と懇意であることは噂に聞く。そもそも精霊の国とやらが本当に存在するのかどうか、その辺りから眉唾物なので、不確かな上に不確かを乗せたあやふやなものなのだが。  その下の詳細を黙読。私たちの身の回りには万物を司る精霊が存在し、契約を結ぶことで大いなる力を借りることができる。精霊は現在十種が確認されており、人との間には『相性』が存在する。ムジーク王国では洗礼を通じて、精霊相性を髪色にあらわす文化がある。国外の方々に、三日間の期間限定でこれを体感してもらいたい――  周囲を見回す。私と共に他国から来た人々は、濃淡の差はあれど皆似たような色味の髪をしていた。個人ではなく、ある程度大まかな種族によって色が決まっているからだ。  それが、ムジーク王国の人々はどうだろう。目の覚めるような赤、深い海の青、若葉を思わせる緑、透き通る金――その様々な髪色は、まるで極彩色の花畑にいるようだと錯覚させた。親子とおぼしき三人組ですら、父が濃紺、母が桃、子が黄緑とばらばらだ。髪色が遺伝によるものではないのだと容易にわかる。  紙にはさらに、精霊との相性を知れば力を借りやすくなる、とある。各精霊の種類と共に、司る色が添えられていた。  私はどの精霊と相性が良いのだろう、そういえば考えたこともなかった。祖国では、呪文を唱えてみたらば発動した、という理由で風の魔法を活用していたが、そうすると私の髪は緑系統となるのだろうか。三日間だけなら、ちょっとしたお洒落感覚で洗礼を受けてみるのもいいかもしれない。  ムジーク王国での旅路が、素晴らしいものになりますように――祈りながら紙を懐にしまうと、私は誘われるように石畳を踏みしめた。 -------------------------------------